同値変形で連立方程式を解く!連立方程式の本質とはなにか

突如として現れた数学おじさんが数学苦手系幼女のメイちゃんに対して同値変形について解説していきます。同値変形で連立方程式を解くと、連立方程式の本質が見えてきます。

方程式の同値変形

数学おじさん:今日は同値変形を使って連立方程式の本質について説明するよ

メイちゃん:同値変形? なんだか小難しそうな響きね

数学おじさん:まあまあ、怖がるでない。まず同値という意味がわかるかな?

メイちゃん:それくらい私も知ってるわ。A\RightarrowBとB\RightarrowAが同時に成り立つときに「AとBは同値(A\Leftrightarrow B)」って言うのよね。

数学おじさん:前回の内容を理解しているようだな。同値の意味がわかっていれば、同値変形を理解するのはたやすいぞ!同値変形とは、A\Leftrightarrow B \Leftrightarrow Cのように式を同値関係で変形していくことを言うのだ。

メイちゃん:同値変形の意味はだいたいわかったわ。でもそれがなんのよ!

数学おじさん:そう焦るでない。ではメイちゃん、この問題を解いてみなさい。

設問1:以下の方程式を解け

\displaystyle \frac{x^2-1}{x-1}=0 \tag1

メイちゃん:こんなの簡単じゃない、少しなめすぎなんじゃないかしらん。

メイちゃんの解答

まず、両辺×(x-1)をすると

x^2-1=0 \tag2

よって、x=\pm 1

数学おじさん:ふふふ。まるでお手本のような間違えだね。

メイちゃん:どいうこと...!?

数学おじさん:じゃあ最初の(1)式にx=1代入して、方程式が成り立つか確かめてごらん。

メイちゃん:...!? 分母が0になってしまうわ!

数学おじさん:ようやく気づいたようだね。僕が仕掛けた罠に...。間違えの原因は同値変形ができなていなかったことなんだ。メイちゃんが示したのは、(1)\Rightarrow(2)だけなんだ。(1)\Leftrightarrow(2)は、メイちゃんの解答だと示せていないんだよ。

メイちゃん:どいうこと? だって、両辺を(x-1)で割れば(2)式から(1)式を導けるはずよ。

数学おじさん:メイちゃん、いいかい「0で割ってはいけない」んだよ。

メイちゃん:あっ、x\neq 1という条件が必要なのね。数学では分母は0にならないという決まりがあるのよね。(1)式にはx\neq 1というのは、当然だから明示されてないんだわ。

数学おじさん:そうなんだ(2)\Rightarrow(1)が成り立つためには、x\neq 1が必要なんだ。なので、(1)式を同値変形すると次のようになるんだ。

おじさんの解答

\displaystyle \frac{x^2-1}{x-1}=0

両辺に(x-1)をかけると

\Leftrightarrow x^2 -1 =0 \wedge x\neq 1

\Leftrightarrow x=\pm 1 \wedge x\neq 1

\Leftrightarrow x=-1

数学おじさん:ここで、\wedgeは「かつ」と読むんだ。両方成り立つという意味だよ。

メイちゃん:わかったわ。(x-1)を両辺にかけたときに、x\neq 1という条件が抜けてしまうのね。だからx\neq 1を付け加える必要があるのね。

数学おじさん:そういうことなんだ。式変形するときは常に同値変形かどうかを考える必要があるんだ。特に分母に変数がある場合は要注意だから気をつけよう。

連立方程式

数学おじさん:じゃあ、次はいよいよ連立方程式方程式だ。連立方程式を同値変形で解いてみよう。

設問2 以下の連立方程式を解け

y=x+2 \tag a

y=2x-3 \tag b

メイちゃん:もう、騙されないわよ。

メイちゃんの解答

まずは、(a)式を(b)式に代入して

x+2=2x-3 ・・・(c)

x=5 ・・・(d)

これを(a)に代入して、

y=7

よって、答えは(x,y)=(5,7)

数学おじさん:はい、正解。でも今回は同値変形がテーマなので、同値変形で解いてくださいね。

メイちゃん:もう、めんどくさいわね!だからモテナイのよ!じゃあ、同値変形するわ。えーと、(a)を(b)に代入して...??

数学おじさん:どうしたんだいメイちゃん?(ニヤニヤ)

メイちゃん(a) \wedge (b) \Rightarrow (c)は示せるけど、逆は示せないわ。一体どうしたら...

数学おじさん:ふふふ... そうだね。1つの式から2つ式は導けないんだ。なのでこうするんだよ。

おじさんの解説

\begin{eqnarray}
&\left\{
\begin{array}{l}
y= x+2  ・・・(a)\\
y = 2x-3 ・・・(b)
\end{array}
\right. \tag A
\end{eqnarray}

\begin{align}
\Leftrightarrow &\left\{
\begin{array}{l}
2x-3 = x+ 2 ・・・(c)\\
y = 2x-3 ・・・(b)
\end{array}
\right. \tag B
\end{align}

メイちゃん:ちょっと(B)の(b)式は同じじゃないの!

数学おじさん:それでいいんだよ。同値変形をするには必ず2つの式が必要なんだ。足りない式は元の式からもってくればいいんだ。こうすると A \Leftrightarrow B が成り立つから何も悪いことをしてないんだ。

メイちゃん:確かにBの(c)+(b)=(a)だからB\Rightarrow Aが成り立つわ。故にA \Leftrightarrow B が成り立つわね。でもそれからどうするのよ?

まずは(B)の1番目の式を変形すると

\begin{align}
B
\Leftrightarrow \left\{
\begin{array}{l}
x= 5  ・・・(d)\\
y = 2x-3 ・・・(b)
\end{array}
\right. \tag C
\end{align}

となる。ここで、(d)のxを(b)に代入するとy=7となるね。そしてA \Leftrightarrow Bと同じようにCから1つ式を持ってくるんだ。そうすると、

\begin{align}
C
\Leftrightarrow \left\{
\begin{array}{l}
x= 5  ・・・(d)\\
y = 7 ・・・(e)
\end{array}
\right. \tag D
\end{align}

となって、解答となるんだ。

数学おじさん:こうやって解くと結果は同じでもA\Leftrightarrow B \Leftrightarrow C \Leftrightarrow Dと同値変形をしながら解くことができるんだ。同値変形を意識して解くと難しい形をした連立方程式でも間違わずに解くことができるぞ。

メイちゃん:ふーん。そうかしらね。めんどくさいだけじゃない。

数学おじさん:むむむ。イマイチ納得がいっていないようだね。

xy平面で考える

数学おじさん:では今度は連立方程式の同値変形を図を使って体感してみよう。まず、連立方程式を解くことは、「xy平面上の2つの式の交点を求めること」というのは知っているよね。

メイちゃん:それは知ってるわよ。中学校で習ったもの。

数学おじさん:そうだね。じゃあ、今回は先程の問題をxy平面でどのように見えるかを考えてみよう。まず、図Aを見てみよう(a)式と(b)式をxy平面上に直線として表した。もちろん交点は連立方程式の解(5,7)だね。次にそれを同値変形した図Cを見てみよう。

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数学おじさん:上の図は、先程の同値変形A\LeftrightarrowCを表しているのがわかるかな。

メイちゃん:(a)式がなくなって、代わりに(d)式になっているのね。でも交点の位置は変わってないわ。

数学おじさん:そうなんだ。これは連立方程式を「集合」という観点で考えるとわかりやすいんだ。

メイちゃん:「集合」ってある要素の集まりって意味よね。

数学おじさん:そうだよ。ここでは、集合(A)を「連立方程式(a),(b)を満たす点(x,y)の集合」と考えるんだ。そうすると集合(A)はもちろん連立方程式の解(5,7)ということになるよね。ところで、集合(A)と集合(B)が同値であるという意味はなんだろう。

メイちゃん:そうね。それは集合(A)と(B)の要素が全く同じという意味だわね。

数学おじさん:そうすると、同値変形というのは集合の要素が全く変わらない変形と考えられるよね。だから、同値変形しても交点は変わらないんだ。ちなみに最終的な答えを図Dに表すと以下のようになる。

            f:id:tax1729:20180830224338p:plain

 メイちゃん:直線が2つともx軸、y軸に平行になっているわ。でもやっぱり交点は変わらないのね。つまり連立方程式を解くというのは、交点を変えずにxy平面上の直線をx,y軸に平行にしていくことなのね。

数学おじさん:メイちゃん!鋭いね。そうなんだ。表す集合(交点)は全く変わっていないけど、それぞれの直線を変化させているんだ。そして最終的にx,y軸と平行な直線に同値変形しているんだ。この同値変形を抑えると様々な問題がわかりやすくなるんだ。次回は軌跡の問題に応用してみよう!