2024年面白かった本

今年も残すところ僅かになりました。今年読んで面白かった本を紹介します。

『第五の季節』

 

まず紹介するのは、『第五の季節』から始まる3部作<<破壊された地球>>シリーズだ。なんとこのシリーズは、3部作すべてがヒューゴー賞長編部門受賞という史上初の快挙を成し遂げた。

本作の内容を、ネタバレなしで紹介するのは非常に難しい。そこで無謀と思いつつ、近年のSF界で歴史的大ヒットとなった『三体』と比べてみたい。(なお、『三体』3部作でさえヒューゴー賞は1回のみである)

劉慈欣の『三体』が遥かな未来へ、そして地球の外側へと想像の羽を広げていく作品だとすると、本シリーズはむしろ過去へ、そして地球の内側へと深く深く降りていき、地球と対話する物語である。

そこには神話があり、歴史があり、差別があり、そして魔法がある。一見するとファンタジーの世界である。そのファンタジーの世界を鮮やかに未来の地球、サイエンス・フィクションへとつなげて見せてくれる作品である。

『記者、ラストベルトに住む トランプ王国、冷めぬ熱狂』

 

次に紹介するのは朝日新聞の記者である金成隆一さんのルポルタージュである。これも3部作となっている。トランプの初当選前から、当選後、そして中間選挙に至るまでを描いている。

「一体どんな人々が熱狂的なトランプ支持者になるのか」

今さらこんな疑問を解決すべく手に取った本書。著者もそんな興味をもって取材をしていくうちに、実際にその土地に住み、彼らと友人になっていく過程が描かれている。

たんなる取材ではもはやなく、1級品のノンフィクション作品に昇華している。

トランプを支持する人々がどんな人たちなのか、非常によくわかる。単に選挙結果やアンケートだけ見て分析するのとは全く違う実情とリアルな人々の苦悩が描かれていて大変良かった。

『神の雫』

ここに来て世界的ワイン漫画の『神の雫』。

いまさらだが、フランスに移住したので一気に読んだ。これがめちゃくちゃおもしろい。ワインの知識ゼロのわたしでも十分楽しめるのだから凄い。『ヒカルの碁』は碁のルール知らなくても楽しめるので凄いのと同様に凄い。

基本的には往年の料理漫画『美味しんぼ』と同じような構成だ。世界的ワイン評論家の父親の遺書に暗示されているワインを主人公とそのライバルが探し出す物語である。

この漫画の面白いのはワインの表現である。

料理漫画は、その料理の味をどう表現するかが難しい。実際に漫画から匂いや味がするわけではないので、言葉と絵で伝える必要がある。それを見事なまでにやってのけたのがこの漫画である。

日本には様々な料理漫画があると思うが、その味の表現については『神の雫』が突出しているのではないだろうか。ワインテイスティングが伝統的に持っていた表現方法を実にうまく漫画の中に映し出している。

この漫画を読んでわたしももれなくワイン沼にはまってしまった。一体いくらワインに使うことになるのやら...

 

最後に

Amazonの購入履歴を遡ると2024年は例年に比べてあまり本を読んでいなかったようです。たしかに今年は転職したてだったり、結婚したり移住したりと私生活が忙しかった記憶があります。来年は少し落ち着いた時間が取れる気がするので、新しいジャンルを見つけ出したいものです。