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瀬川晶司『泣き虫しょったんの奇跡』映画公開前なのであらすじ・感想書いた

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映画公開記念ということで、瀬川晶司『泣き虫しょったんの奇跡』のあらすじ・感想をまとめました。実は僕は結構な将棋ファンです。将棋ファン以外でも、1人でも多くの人に読んでほしいです。藤井七段の活躍の影でプロ棋士になることなく消えていった奨励会員に思いを馳せずにはいられません。

作品・作者紹介

この本は社会人から編入試験でプロ棋士になった瀬川晶司五段の実話を本人が書いています。

この本、映画を見る前に知っておくべきことがあります。それは将棋の棋士になるにはどうしたらよいか、ということです。棋士になるには、棋士の養成所である奨励会に入らなければなりません。

奨励会は将棋の強さに応じて、6級〜3段までのクラスがあります。最高クラスの3段で半年間かけて行われるリーグ戦で、成績トップの2名がプロ棋士になることができます。

つまり、年間4人しかプロ棋士になることができません。26歳までにプロ棋士になれなければ、強制的に奨励会を退会しなければなりません。このルールが幾多の悲劇とドラマを生むことになります。

奨励会には全国から、神童と呼ばれる将棋少年たちが入会します。彼らの多くは小学生高学年から中学生で奨励会に入会します。26歳まで青春時代のほとんどを将棋に注ぎ込みます。

そんな若者が全員プロ棋士になれるかというとそうでもありません。プロ棋士になるには、将棋の実力もさることながら強い運も必要です。例えば、強豪がひしめき合う時代の奨励会もあればそうでないときもあるでしょう。たまたま昇段を争っていたライバルが負けて運良くプロ棋士になれることもあります。

奨励会員は人生をかけて将棋をしています。26歳までにプロ棋士になれなければ、もうプロ棋士になることはできません。自分の夢は永久に叶わないのです。そして、将棋しかやってこなかった若者は、その後いったいどうすればよいのでしょうか。

瀬川晶司はそんな境遇に追い込まれた若者です。プロ棋士になることを夢見て奨励会に入り、夢破れた若者なのです。でも彼は少年時代のその夢を諦めなかった、ずっと追いかけてきた。この本はそんな大人の物語です。

感想

僕が将棋ファンということもありますが、奨励会の話は涙なしに読むことはできません。僕はついつい羽生竜王の影で、藤井七段の影で夢破れた彼らの姿を想像しないわけにはいきません。

本作を読むと、いかにプロ棋士になるということが大変か、が理解できます。そして、そんな厳しい世界に飛び込んだ覚悟に敬意を払わないわけにはいかなくなります。僕はこの本を読んでから、全てのプロ棋士が違って見えてきました。

彼らがどんな厳しい世界を生きてきたか(しかもあの年齢で)を思うと、凄いなあと思わずにいられません。プロ棋士が全員かっこよく思えます。

本作で特に良かったのは、普段はあまり語られない奨励会時代の棋士たちのエピソードが語られる点です。現役棋士が実名で出てきているので、あの棋士はこんな感じの人なのか〜と1人でニヤニヤしてしまいます。

瀬川晶司がプロ棋士になった裏で、元奨励会員やプロ棋士の友情に思わず涙してしまいます。そして夢を最後まで諦めない瀬川晶司がカッコいいです。現在、現役で活躍する多くの棋士が出てくるので将棋ファンは、読んで損しない本だと思います。

もちろん、最近将棋に興味が出てきたという人は将棋界の仕組みや棋士の人柄を知るのにちょうどよい作品です。映画と一緒に本作もぜひ読んでみてください。