大江健三郎『万延元年のフットボール』のあらすじ

大江健三郎の『万延元年のフットボール』を読んだので、あらすじをまとめました。買おうかどうか迷っている人やどんな話か知りたい人向けの記事です。※ネタバレはありません。個人的には読んで損はない、というより読んだほうがよい作品だと思います。

万延元年のフットボール (講談社文芸文庫)

おすすめ度

おすすめ度:5点(5点満点中)

大江健三郎は読みにくいというイメージでしたが、そんなことは全く無いです。ミステリーの要素もあるので飽きずに読むことができます。すべての文章が全く無駄なくラストシーンへと向かっていく展開には思わず感動してしまいました。僕が読んだ小説の中でもベスト3に入ること間違いなしです。

作品紹介、あらすじ

『万延元年のフットボール』は大江健三郎中期の長編小説です。一般的には大江の代表作とされ、ノーベル文学賞受賞の受賞理由にも挙げられています。この作品には障害児や安保闘争といった大江の重要なモチーフがいくつも登場します。

舞台は大江の故郷である四国の山奥です。なにか中上健次の小説を思い出させます。もちろん、中上健次が大江健三郎に影響を受けたのだと思いますが。ミステリアスな雰囲気と四国の山奥の寒々しい描写が見事に調和しています。そしてクライマックスでは、大江の綿密なプロットに驚かせれることでしょう。

主人公の蜜三郎は翻訳や大学で講師をして暮らしています。妻との間には一人の息子は障害を持っています。ある日、友人が自殺し、妻がアル中になり、育児放棄をする。そして夫婦関係も冷めてしまう、そんな絶望的な場面からこの小説は始まります。

そんは夫婦のもとにアメリカに留学していた弟・鷹四が帰ってきます。弟は実家の家を売るために四国に帰るので、手伝ってほしいと蜜三郎に言います。そこから物語は蜜三郎夫婦と鷹四、そして鷹四を慕う若者二人で進行して行きます。

故郷についた蜜三郎は、村にできたスーパーマーケットを目にします。スーパーマーケットは村の経済を支配しています。その店長は「スーパーマーケットの天皇」と呼ばれているのでした。

「スーパーマーケットの天皇」を相手に、百年前に村で起こった万延元年の一揆を再現しようと鷹四は若者たちを集めます。その間にも蜜三郎と妻の関係性は冷え切って行き、妻は次第に鷹四に心が惹かれていくように思えるのでした。

次第に物語は悲劇的な結末へと進んでいきます。革命という夢の果てに夫婦に一体なにが残るのか。あまりに感動的な再生の物語です。

『万延元年のフットボール』の感想・書評も書いています。↓

『万延元年のフットボール』の書評|夫婦について考える - 現代の高等遊民 blog