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筒井康隆『家族八景』『七瀬ふたたび』『エディプスの恋人』|あらすじ・感想

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筒井康隆の『七瀬』3部作を読んだので、まとめてあらすじ・感想を書きました。筒井康隆の魅力が詰まった作品です。

おすすめ度

おすすめ度:★★★★☆

個人的には1作目がやや単調と感じました。短編集なのですが、同じような展開が続くので少々飽きてしまいます。

しかしながら、2作目、3作目が素晴らしいので読んで損はないと思います。

 作者・作品紹介

筒井康隆といえば、もはや紹介の必要もない日本SF界の大御所ですね。『時をかける少女』や『七瀬ふたたび』は度々ドラマ化、映画化されています。

筒井はジャンルに捕らわれない作家です。SFから純文学、パロディ、前衛など様々な作風の小説を発表しています。そのどれもが高い評価を受けている数少ない作家の1人です。

この3部作はブラックユーモアあり、エンターテイメントあり、超展開ありと盛りだくさんの3部作です。1作目を読んだら、3部作全部読むことをおすすめします。特に3作目は圧巻です。

あらすじ(ネタバレなし)

主人公の七瀬は相手の心を読むことができる能力(テレパス)をを持っている美少女という設定です。1作目は、住み込みの家政婦として働く七瀬がそれぞれの家族が抱える諸問題を謎の正義感とテレパスを持って拗らせていく物語です。

2作目の『七瀬ふたたび』では、七瀬は初めて自分以外のテレパスである男の子・ノリオと出会います。テレパスであることをひたすら隠し続けていた七瀬にとって初めて心を許すことのできる存在であり、守るべきものとして描かれます。
2作目はノリオ以外にも様々な特殊能力者がでてきます。3部作の中ではエンターテイメント性が高く、X-Menみたいです。

3作目の『エディプスの恋人』では、七瀬は学校の事務員として働いています。そこで不思議な少年と出会います。その少年は超能力者というわけではありませんが、身の回りで不思議な事件が起こる少年です。
そして七瀬はそれを何者かの”意思”で少年が守られていることに気づきます。果たしてその”意思”は何者なのか。誰が操っているのか。ミステリーと思いきや最後でどんでん返しが待っています。

感想(ネタバレあり)

家族八景

家族八景』は筒井康隆おなじみのブラックユーモラスな作品です。
基本的にはセックスの話しか出てきません。これは作品全体を通しても言えることですが、男の登場人物の殆どが七瀬とあったときに、七瀬の裸体を想像するところがなんとも言えず面白い。

ちなみに私も美人と思った人の裸体を想像しようと努力しましたが、全くできませんでした。かなりの想像力が必要です。
念のために言っておきますが、初めてあった女性の裸なんて余程想像力がないと思い浮かびません。世の女性は安心してください。

『七瀬ふたたび』

2作目の『七瀬ふたたび』では、前作と比べ超能力者が色々と出てくるので、アベンジャーズ的なエンタメ要素が大きいと感じました。しかし、さすがは筒井先生でして全員死にました。流石です。

特に未来予知能力のある恒夫が死ぬシーンはかっこよすぎでしたね。

オレハココヘコロサレルタメニキタノダ
『七瀬ふたたび』

『エディプスの恋人』

物語は『エイディプスの恋人』へと続きます。そこでは、前作で死んだはずの七瀬は何食わぬ顔で学校の事務員として働いています。

七瀬は不思議な力に守られている少年=トモヒロを守る謎の”意思”について調べているうちにトモヒロと恋に落ちてしまいます。その恋心でさえ”意思”によって操られていることに七瀬は気づきます。

終盤、その”意志”はトモヒロの母であり神であるという超展開。しかも、初セックスの最中に”意思=母=神”に心を入れ替えられるという題名どおりの近親相姦(エイディプスとは、父親を殺して母親とセックスしたギリシャ神話の王です。つまりトモヒロ=エイディプス、七瀬=恋人となります。)

この小説が素晴らしいのはこのあとです。七瀬は謎の老人(天使)との話を終え家路に帰ろうとします。そこで彼女は気づきます。彼女自身が『エイディプスの恋人』という物語の一部であることに。

彼女の視線は物語を飛び越え、読者を見つめ返します。その刹那、七瀬は僕たちの心をテレパスするのです。圧巻のコペルニクス的展開...!

彼ら超能力者たちを抹殺しようとする人間などひとりもいない「エディプスの恋人」という舞台で彼らにいかなる演技が可能であろうか。
七瀬は足を早めた。七瀬にはそれがまるで、「彼」の許に帰り「彼」の妻になる運命を確実なものとすることによって「エディプスの恋人」が終わる時を自分が一刻も早めようとしているかに思えるのであった。
『エディプスの恋人』